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事業承継 |
2007年5月2日 18時22分 |
先日のセミナーで話した内容を一部紹介します。
(1)事業承継対策をしないと、どのような問題が起こるか。
@高齢の代表者が実権を握っていて、後継者に権限委譲がされない。
中小企業によくある話です。特に代表者が創業者である場合には、亡くなる間際まで絶大な権力を振るう場合があります。後継者にとっては頼もしい存在である反面、非常に迷惑な話です。この場合、後継者は経営全体を掌握しておらず、債務や担保の状況、資金繰り、人事、経営見通などの幾つかの部分対する認識が甘いため、経営を引き継いだ直後に大問題を抱える場合があります。世間もワンマン社長が亡くなった後の会社の評価を低く見ています。大手企業の支店長や支社長クラスが40代に集中していることを考えると、後継者が45歳になる時期がひとつの目処ではないでしょうか。
A事業承継の準備をしないまま経営者の判断力が低下。
事業承継は、まず誰を後継者にするかという点から始まります。息子は就職をしてしまって、帰って来ないかもしれない。一緒に事業をしている弟も高齢である。弟の息子を後継者に指名するべきかどうか・・・と迷っているうちに、世の中の流れの早さについて行けず、経営状態がどんどん悪化する。
B後継者に事業用資産の集中が出来なかった。
創業者の父が亡くなったが、事業用資産は全て父の所有のままになっていた。勘当状態で家に寄りつかなかった弟が、他の商売で多額の借金を作り遺産分割がスムーズにいかない。または、創業者の妻と後継者の妻の仲が悪く、創業者の妻は近くに住んでいる娘に遺産を分割したがる。
(2)事業承継と相続対策は同義ではない。
例えば、目先の相続を考えた場合、同族株式の株式評価を配当還元方式を利用して、出来るだけ低く抑えて株式を贈与してしまい、相続時の被相続人の株式を出来るだけ少なくしておく、という方法が考えられます。しかし、孫の世代を考えてみてください、孫が経営者になったとき、会社に関わりのない従兄弟に株式を所有されることになります。従兄弟が居ない場合にはもっと複雑です。つまり最初に株式を贈与した、次男の妻の兄弟の子供(たぶん会ったこともない他人)に株式を所有されているかもしれません。贈与で返してもらう場合には、こちら側は中心的な同族株主ですから、かなりの税金が必要になります。時価で買い取ってくれという要求があるかもしれません。
このように、目先の相続対策で事業用資産を分散すると、後の世代がとても迷惑するかもしれません。この点をよく考えてみましょう、というのが事業承継の中心的なテーマになります。
(3)後継者の教育
さて、後継者対策の第一歩は、後継候補者を決めることです。他の会社に勤めている息子さんがおられるなら、出来るだけ早い時期に話し合って、互いの意志を明確にすることです。後継の意志があるのなら、45歳を目処に逆算して後継者教育を早く始めないといけません。息子さんにその意志がないのなら、出来るだけ早く見切って他の親族を捜し、親族に適当な後継候補者が居ない場合には、従業員から探すことも考えないといけないかもしれません。
後継者の教育につては各種のセミナーもあります。ここでは割愛しますが、その他にJCやPTA、地域ボランティアといったような上下関係のない組織でのリーダーの経験も重要ではないかと思います。上下関係や雇用関係のない組織で人を動かす(人に動いてもらう)には自分の考えを人に理解させる情熱や真面目さ、筋の通し方、人を信頼して仕事を任せることなど、様々に学ぶことがあります。
(4)後継者への事業用資産の集中
@遺言書の作成
遺言書がまず思いつきますが、相続人全員が合意したら、遺言書に記載された通りに遺産を分割しないことが出来ます。相続人たちに自分が死んだ後で遺言書を守らせるためには、相続人たちの心に訴えるような遺言書が必要です。誰に何を渡すだけではなくて、自分の生き様や、自分が死んだ後、どのように暮らして欲しいという思いを遺言書の前文に書くのは有効かもしれません。
A相続時精算課税制度の活用
贈与者65歳以上、受贈者20歳以上2500万円まで、贈与税なしで贈与することができます。ただし、贈与資産の贈与時の時価で相続税の計算に算入されるので、単純な相続対策ではなく事業承継に利用されます。
B相続時精算課税制度の特例
さらに、本年度の改正で、相続時精算課税制度が拡充され、中小企業のオーナー経営者が、自社株を後継者である20歳以上の子(代表者になる者)に贈与する場合、贈与者である親の年齢要件を60歳以上に引き下げ、非課税枠を3000万円に引き上げられました。ただ、この制度は要件が厳格なために、ちょっと利用しにくいかもしれません。
C金庫株買い取り
創業時、親族や友人または個人営業時代の従業員などに自社株を分散しがちですが、しかしここまで説明してきたとおり、後継者のために株式の所有関係を整理しておき、後継者へ自社株を集中しなければなりません。現在の株主は、創業者自身はよく知っている人たちですが、後継者にとって一面識もないかもしれません。創業者自身が健在なうちに自己株式を会社で買い取ることによって、後継者に将来の揉め事を残さないようにしておくことが必要です。古参社員に持たせている自社株についても退職時にトラブルにならないように、きちんと整理しておくべきでしょう。
(5)後継者以外の相続人への配慮
遺留分減殺請求される前に、感情的な問題を常々フォローしておきましょう。
(6)多額の負債がある場合
生命保険の活用や役員借入の債務免除の対策を出来るうちにしておきましょう。
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