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子会社への債権を貸倒れ処理した場合の取り扱いについて
 債権放棄による貸倒損失は、貸付けの内容、債務者の資産状況等事実認定によって結論が大きく異なります。以下の解説は「近畿税理士界」532号に掲載された文章からの抜粋です。

(1)回収不能の金銭債権の貸倒れについて
 法人の貸倒損失の処理について、法人税法には別段の定めがないことから、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に基づいて計算されます(法法22条4項)。「中小企業の会計に関する指針」17では、貸倒損失について、「法的に債権が消滅した場合の他、回収不能な債権がある場合は、その金額を貸倒損失として計上し、債権金額から控除しなければならない」とし、「『回収不能な債権がある場合』とは、債務者の財政状態及び支払能力から見て債権の全額が回収できないことが明らかである場合をいう」としています。尚、実務の取り扱いとして「当該金銭債権について担保物があるときは、その担保物を処分した後でなければ貸倒れとして損金経理することは出来ないものとする」(法基通9−6−2)とされています。従って、貸付金の担保となる資産がなく、解散を目的としたような債権放棄については、その損失は税務上も損金として処理されます。
 また、その損失の計上時期は債務確定主義によります(法法22条3項)。例えば、平成11年12月22日裁決(TAINS F0-2-169)のケースは、和解金を限度として弁済を受け、これを超える額は債務免除する旨の協議決定をしていたのですが、本件和解金が完済されたときにはじめて効力が発生する停止条件付きの債務免除であり、返済が継続している間は債務が確定せず、損金算入することが出来ないとされました。

(2)寄附金該当性について
 寄附金の損金不算入制度の趣旨について裁判例(福井地裁平成13年1月17日判決・TAINS Z250-8815)は次のように説明しています。「寄附金もまた法人の純資産の減少ではあるが、法人が支出した寄附金の金額が無条件で損金となるものとすると、その寄附金に対応する分だけ当該法人の納付すべき法人税額が減少し、その寄附金は国において負担したのと同様な結果になることから、これを排除することにあると解される」。ところで債権放棄に関する寄附金該当性について「損失負担等をしなければ今後より大きな損失を蒙ることになることが社会通念上明らかであると認められるためやむを得ずその損失負担等をするに至った等そのことについて相当な理由があると認められるとき」には寄附金に該当しない旨の通達(法基通9−4−1)が公開されています。また、その子会社等の営業を継続する場合の支援についても、「その無利息貸付け等が例えば業績不振の子会社等の倒産を防止するためにやむを得ず行われるもので合理的な再建計画に基づくものである等その無利息貸付け等をしたことについて相当な理由があると認められるとき」は寄附金に該当しないとしています(法基通9−4−2)。尚、この場合の合理的再建計画について「支援額の合理性、支援者による再建管理の有無、支援者の範囲の相当性及び支援割合の合理性等について、個々の事例に応じ、総合的に判断するのであるが、例えば、利害の対立する複数の支援者の合意により策定されたものと認められる再建計画は、原則として、合理的なものと取り扱う」としています。

(3)貸付金としての事実認定について
 ところで、その貸付金が事業上の貸付金であるのか、という点をまず確認しないといけないでしょう。例えば息子が代表取締役をしている別会社が倒産したためにした保証債務の履行に伴う損失について、「これら一連の行為は、請求人が同族会社であったこと及び甲と乙が親子関係にあったためなされたものと判断されるから」、その保証債務履行に伴う損失は貸倒損失ではなく寄附金であるとした裁決例(昭和62年3月30日裁決・TAINS J33-3-03)があります。また、別の裁決(平成9年6月2日裁決・裁決事例集No.53 293頁)のケースでは100%子会社が税務調査により多額の租税債務を負ったため、営業を新設会社に譲渡し租税債務だけを残してこの子会社を解散。親会社がその租税債務を負担したうえで、これを債権放棄したのですが、もちろんこのケースでは貸付けの当初から回収の意思がないと推認されることから寄附金と認定されています。これらのケースのように、単に回収不能が明らかであっても、その貸付けに経済的な合理性がないと、その貸倒れによる損失が寄附金と認定される場合がありますので注意が必要です。

(4)回収可能性の判断について
 次に注意が必要なのは、回収可能性の事実認定です。「回収不能でない債権を放棄した場合には、その放棄が債権者の如何なる事情に基づくかによらず、債務者にとっては経済的利益を無償で受けたことになるのであり、かかる点からすれば、債権者の動機の如何を問わず、回収不能でない債権を放棄した場合には、寄附金に該当すると解するのが相当である」(宇都宮地裁・平成15年5月29日判決・TAINS Z253-9355)と考えられます。そこで裁判例等をもとに、具体的なケースを紹介します。
@事業継続のケース
 宇都宮地裁(前掲判決)のケースでは、「債務免除を受けた法人が、その時点で、事務所を有し従業員を雇用して所期の事業を継続していること、他の法人とその連帯保証人に対し損害賠償請求訴訟を提起し係争中であったこと等を理由に回収不能が明らかであったとはいえない」と結論しています。
A未完成建物にも担保価値があるとしたケース
 平成18年11月27日裁決(TAINS J72-3-23)のケースでは、納税者は債務者が所有する建物は三世帯住宅という特殊な構造のため売却が困難であり、担保価値がなく回収不能であるとの主張をしたのですが、審判所は、「本件建物は約70%程度完成し、既に建物として成立しており、何らの担保も設定されておらず、本件建物自体に資産価値がないことが最終的に明らかになっていない」、として寄附金を認定しています。
B債務者が資産を有する場合で、貸倒れ処理を認めたケース
 上記Aとの関連で、債務者には借入総額の40%の資産があるにもかかわらず、債権放棄により貸付金の貸倒れ処理を認めたケースがあります。このケースは「日本興業銀行事件」として有名な事件であり、一審の東京地裁(平成13年3月2日判決・TAINS Z250-8851)では納税者勝訴、二審の東京高裁(平成14年3月14日判決・TAINS Z252-9086)では納税者逆転敗訴、そして最高裁(平成16年12月24日判決・TAINS Z888-0921)で再逆転納税者が勝訴したケースです。最高裁は、「金銭債権の全額が回収不能であるか否かの判断は社会通念に従って総合的に判断させるべきであり、母体行としての社会的、道義的な責任は信義則上の責任であり、貸出金全額の放棄を責任の限度とし、それ以上の責任を回避しようとしたことが認められる」として、貸倒れ処理を認めています。
 
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社会的・道義的責任は法的責任か?
平成16年12月24日、最高裁は高裁の判断を覆し、社会通念上回収不能の債権を貸倒処理することを認めた判決の言い渡しをしました。この判決はどのような意味があるのでしょう。

(事件の概要)
 納税者である某銀行(3月末決算)の貸出金の3月29日付債権放棄に係る貸倒処理について税務署の課税処分が行われ訴訟に至りました。貸出先は住専と呼ばれる住宅金融専門会社で、バブル崩壊の煽りを受け巨額の不良債権が当時社会問題となり住専処理法の成立する前後の時期の事件です。一審の東京地裁では社会通念上回収不能であり、金融機関の主張を認める判決をしました。しかし東京高裁は次のような理由で課税処分を認める判決を行いました。
(1) 債務者である某住専には借入総額の40%にあたる資産があり、債権が全額回収不能であるとはいえない。
(2) 債権者である某住専の母体行としての社会的、道義的責任上その債権を行使し難いからといって、これを貸倒の理由には出来ない。
 

(高裁の判決要旨より) 

本件債権が貸倒れであるとして損金算入することが認められるためには、債務者の信用状態からその全額の回収が不能となって、資産性が全部失われることが必要であるところ、平成8年3月末当時においては、■■■■■■■■■■には借入金総額の約40パーセントに当たる1兆円の資産が残されていたものであり、■■■■■■■■■■の母体行である被控訴人の本件債権が弁済順序において法的に最劣後のものとなっていたということはできないし、担保権についても無条件でこれを放棄したものとは解されないから、上記の時点においては、本件債権の全額が回収不能であったとはいえない。また、被控訴人には、■■■■■■■■■■の母体行としての社会的、道義的責任上、本件債権を行使し難いような事情があったしても、その故をもって本件債権が貸倒れに当たるとして、本件債権相当額を本件事業年度の損金に算入することはできない。


高裁のこの判断は、次の法人税基本通達に沿ったもののように思えます。
 

(法人税基本通達9−6−2) 

法人の有する金銭債権につき、その債務者の資産状況、支払能力等からみてその全額が回収できないことが明らかになった場合には、その明らかになった事業年度において貸倒れとして損金経理をすることができる。この場合において、当該金銭債権について担保物があるときは、その担保物を処分した後でなければ貸倒れとして損金経理をすることはできないものとする。


税務調査の現場ではこの通達が硬直的に適用され、債務者側に処分可能な資産が存する場合には貸倒損失の損金処理を否認されるケースが予想されます。本件の東京高裁の場合にはさらにこの結論を補強する為に、「平成8年12月末までに住専の営業の譲渡及び解散の登記が行われないこと」を解除条件に債権の全額放棄をしている点に目をつけ、債務は不確定であり、これを当該決算期の損失とすることは一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に適合しない旨の理由を述べています。
 

(高裁の判決要旨より)

この場合に本件債権の放棄による損失を本件債権放棄のされたときの属する事業年度の損金に算入すべきものとすることは、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に適合しないし、本件におけるような流動的な事実関係の下において、このような解除条件付きの債権放棄がされた場合には、その意思表示のときの属する事業年度ではなく、解除条件の条件不成就が確定したときの属する事業年度における損金としてこれを計上すべきものであることからも、本件債権の放棄による損失を本件事業年度の損金に算入することはできない。


(最高裁の判断)
 最高裁は上記の高裁判決を破棄し銀行側勝訴の判断を下しました。その理由は以下のようなものです。
(1) 金銭債権の全額が回収不能であるか否かの判断は社会通念に従って総合的に判断されるべきものである。
(2) 銀行側は本件住専の経営に深くかかわり、他の債権者から信義則上の責任を追及されかねない立場にあったが、貸出金全額の放棄を責任の限度とし、それ以上の責任を回避しようとしたことが認められる。
(3) 解除条件は住専処理法が不成立である場合を念頭に置いたものであるが、仮に不成立であっても、改めて他の債権者に平等負担を求めることは社会通念上想定しがたいから、解除条件付であることが結果を左右しない。
などの理由で、平成8年3月末までに本件の貸出金の全額回収不能が客観的に明らかであったと結論付けています。

 

(最高裁の判決文より)

(1) 法人の各事業年度の所得の金額の計算において、金銭債権の貸倒損失を 法人税法22条3項3号 にいう「当該事業年度の損失の額」として当該事業年度の損金の額に算入するためには、当該金銭債権の全額が回収不能であることを要すると解される。そして、その全額が回収不能であることは客観的に明らかでなければならないが、そのことは、債務者の資産状況、支払能力等の債務者側の事情のみならず、債権回収に必要な労力、債権額と取立費用との比較衡量、債権回収を強行することによって生ずる他の債権者とのあつれきなどによる経営的損失等といった債権者側の事情、経済的環境等も踏まえ、社会通念に従って総合的に判断されるべきものである。

(2) これを本件債権についてみると、前記事実関係によれば、次のとおりである。

ア  母体5社は、平成7年9月にA社を整理する方針を確認したところ、その後の農協系統金融機関との協議において、農協系統金融機関が、その元本損失部分についても母体行が責任を持つ完全母体行責任による処理を求めたのに対し、B銀は、その貸出金全額の放棄を限度とする修正母体行責任を主張し、債権額に応じた損失の平等負担を主張することはなかった。
 

イ  その背景として、B銀は、A社の設立に関与し、独禁法で許容される上限まで株式を保有し、役員及び職員を派遣し、多額の融資を行うなどして、その経営に深くかかわっていたという事情があった。そして、同4年に策定された第1次再建計画によってはA社の経営再建ができなくなり、同5年に本件新事業計画が策定されるに至ったが、農協系統金融機関が融資残高の維持及び金利の減免を内容とする同計画に応じたのは、母体行が責任を持って再建計画に対応することが明確にされたからであった。そうすると、B銀は、本件新事業計画を達成することができなかったことにつき、農協系統金融機関から信義則上の責任を追及されかねない立場にあったということができる。

ウ  本件新事業計画は、A社の再建を前提としたものであって、その破綻後の整理を前提としたものではないものの、A社の余裕資金による返済順序の第2順位が母体ニューマネー、第4順位が農協系統金融機関の債権とされ、母体行の従前からの債権がそれらに劣後するという内容であったところ、B銀は、A社の整理が避け難い情勢になった後においても、A社から母体ニューマネーを回収していた。したがって、農協系統金融機関が完全母体行責任を主張することには無理からぬ面があり、B銀も、上記のような経緯を考慮して、修正母体行責任が限度であると主張して、本件債権の放棄以上の責任を回避しようとしていたものということができる。

エ  母体5社は、本件閣議決定及び本件閣議了解で示された住専処理計画に沿ってA社の処理計画を策定し、同計画において、B銀は、本件債権を全額放棄すること、すなわち、本件債権を非母体金融機関の債権に劣後する扱いとすることを公にしたということができる。前記のとおり、B銀においてせいぜい修正母体行責任しか主張することができない情勢にあったことをも考慮すると、仮に住専処理法及び住専処理に係る公的資金を盛り込んだ予算が成立しなかった場合に、B銀が、社会的批判や機関投資家としてB銀の金融債を引き受ける立場にある農協系統金融機関の反発に伴う経営的損失を覚悟してまで、非母体金融機関に対し、改めて債権額に応じた損失の平等負担を主張することができたとは、社会通念上想定し難い。

オ  前記のA社の処理計画において、A社の正常資産及び不良資産のうち回収が見込まれるものの合計額は、非母体金融機関の債権合計1兆9,197億円を下回る1兆2,103億円とされたが、この回収見込額の評価は、本件閣議決定及び本件閣議了解で示された公的資金の導入を前提とする住専処理計画を踏まえたものであるから、破産法等に基づく処理を余儀なくされた場合には、当時の不動産市況等からすると、A社の資産からの回収見込額が上記金額を下回ることはあっても、これを超えることは考え難い。

(3) 以上によれば、B銀が本件債権について非母体金融機関に対して債権額に応じた損失の平等負担を主張することは、それが前記債権譲渡担保契約に係る被担保債権に含まれているかどうかを問わず、平成8年3月末までの間に社会通念上不可能となっており、当時のA社の資産等の状況からすると、本件債権の全額が回収不能であることは客観的に明らかとなっていたというべきである。そして、このことは、本件債権の放棄が解除条件付きでされたことによって左右されるものではない。

 


(コメント)
この最高裁判決は法に基づいた責任以外に、社会的・道義的責任を認めたわけでも、「法人税基本通達9−6−2」を否定したわけでもありません。最高裁判決は債務者に処分可能な財産があっても全額回収不能であることが客観的に明らかであるといっています。それは高裁判決がいう「社会的・道義的責任」に基づいて損失の平等負担を放棄しているからです。最高裁判決ではこの責任を社会通念に従って総合的に判断された責任とし、また「信義則上の責任」との言葉も使用して法的な責任まで高めています。


2005.08.01
 
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法人課税の際の公平原則の適用
人には憲法14条(法の下の平等)の適用があるか
 まず、法人には憲法14条の適用があるのかという点から考えてみましょう。芦部教授は「人権は、個人の権利であるから、その主体は、本来人間でなければならない。しかし、経済社会の発展にともない、法人その他の団体の活動の重要性が増大し、法人もまた人権の享有主体であると解されるようになった・・・わが国でも、人権規定が、性質上可能なかぎり法人にも適用されることは、通説・判例の認めるところである」とし、その根拠を「法人の活動が自然人を通じて行われ、その効果は究極的に自然人に帰属することに加えて、法人が現代社会において一個の社会的実体としての重要な活動を行っていることを考え合わせると、法人に対しても一定の人権の保障が及ぶと解するのが妥当であろう」と説明されています※1。この説明には二通りの根拠が併記されていますが、先の説明の中にある「性質上可能な限り」とはどのような意味であるかを考えるうえで結論に影響を及ぼします。橋本基弘教授は前者の根拠を「個人利益還元説」後者を「団体固有利益説」と名づけられています※2。そして今日通説的見解であるとされる団体固有利益説の誤謬を指摘されています※3。すなわち橋本教授は団体の人権享有主体性には「個人の人格的自律や尊厳といった原則的な正当化ではなく、「必要性」という功利的な正当化が採用されている」と述べられており※4、私もこの説を支持します。つまり法人にも憲法14条の「法の下の平等」は適用されるのですが、しかしそれは「個人の尊厳」を根拠にする個人にかかる「法の下の平等」とは性質が異なり、功利的な必要性からの「法の下の平等」なのです。
 
法人課税のあり方 
 法人に対して憲法上要請される功利的な必要性からの「法の下の平等」とはどのようなものでしょうか。平等の種類については経済学者の石川経夫教授が『所得と富』という著書にまとめられています。石川教授は分配の「公正」の定義につき、大きく「手続きの公正に着目する考え方」と「結果の公正に着目する考え方」の二つの接近方法を示されています※5。そして前者の基準が「機会の平等」です。なお、石川教授はこのような古典的な平等の基準が解決しえない問題について論を進められますが、ここでがはその内容に踏み込みません。石川教授のこの議論は個人の尊厳に基づく個人の平等を論じているからです。法人には衣食住や人種や教育などの問題が無いのであり、資本主義社会が経済活動を行うことを目的として商法その他の法令により設立が認められた法人は、その経済活動について平等に機会が与えられさえすればよいのです。そしてその法人の経済活動が個人に還元されたときにはじめて結果の平等を始めとする平等が論じられるのです。憲法14条の「法の下の平等」は法人にも自然人(個人)にも適用されますが、法人の存在は個人が存在することと本質的に異なるので、法人にとっての平等と個人にとっての平等もまた本質的に異なります。このように考えると法人税法上の「税負担の公平」とは資本主義経済のルールに従って平等に競争する機会が与えられたのなら、税負担を分配する上でその結果には介入してはならないことだと言えるのではないでしょうか。


※1 芦部信喜『憲法 新版補訂版』(岩波書店1999年)87頁。
※2 橋本基弘「非政治団体の政治的自由と構成員の思想・信条の自由(下)」高知女子大学紀要 人文・社会科学編 第43巻(高知女子大学編1995年)12頁。
※3 橋本基弘・前掲注2論文・13頁。
※4 橋本基弘・前掲注2論文・14頁。
※5 石川経夫『所得と富』(岩波書店1991年)第二章27頁以下 結果の平等には「貢献に応じた分配」、「必要に応じた分配」および「努力に応じた分配」の基準が挙げられ、機会の平等には「形式的な機会均等」と「公正な機会均等」との種類を挙げられる。そしてこのような古典的な平等概念より、さらに高次な概念の必要性を主張される。

 
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