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申告納税制度における税理士の役割
(1)はじめに

「申告納税制度は民主的納税思想に適合する」(金子)とされるが、一方で納税者自身に租税債務を確定する義務を負わせる。すなわち申告納税制度は納税者自身の複雑・難解な租税法規の理解を前提としている。税理士には納税者の理解を助け、また納税者を代理することによって、申告納税制度を支える重要な役割がある。

(2)申告納税制度の意義

国税について納付すべき税額の確定方式には、申告納税方式と賦課課税方式がある。このうち前者は「納付すべき税額が納税者の申告により確定することを原則とし、その申告がない場合又はその申告に係る税額が国税に関する法律の規定に従っていなかった場合その他当該税額が税務署長又は税関長の調査したところと異なる場合に限り、税務署長又は税関長の処分により確定する方式をいう」(国通16条@一)とされる。

平成十五年水戸地裁判決(TAINS・Z253-9321)のケースは、造園業を営む個人事業者が無申告の所得について、充分な資料を提供しなかったにもかかわらず、税務職員が所得算定において必要経費に関する調査を怠ったと主張したケースである。裁判所は「所得税法は、申告納税制度を採用し、課税標準である所得金額等を正確に申告することを納税者に義務付けており、収入金額や必要経費を明らかにする責任が納税者自身にあることはいうまでもなく、申告せずに、税務調査を受けたからといって、これらの義務が免除される理由がないことは当然であって、本件申告における経費が乙係官記載のものにとどまったことは、原告自身の責任というべきである」と判示している。

このように、申告納税制度の下では、納税者は自ら収入金額や必要経費など課税標準算定のための根拠を明らかにし、租税債務を自ら確定する義務を負う。

(3)納税者の責任

 先の水戸地裁の事件のケースに同情の余地はあまりないが、次に紹介する事案のように納税者に酷ではないかと思われるケースもある。
 消費税等の法定申告期限及び法定納期限までに、総額二百四十七億余りを納付したにもかかわらず、その申告書の提出を失念し十二億余りの無申告加算税の賦課がされたケースである(TAINS・Z255-10134)。

 裁判所は「納税申告方式により納付すべき税額が確定する税についての納税申告書の期限内提出の重要性等にかんがみれば、納税申告書の提出を失念し、これを法定申告期限内に提出しなかったこと自体が、申告納税方式による租税の納税手続の根幹を成す納税義務者の重要な義務の不履行といえるのであって、原告主張の諸点を考慮してもなお、このような原告の義務違反は行政制裁として無申告加算税を賦課するに値するものというべきである」と判示した。

 その後、同様のケースは平成十八年度改正により無申告加算税を課さない手当てがされたが、申告納税制度の下では、納税者自身が租税債務を確定するのであるから、納税者自身のうっかりミスによっても、原則として納税者自身が責任を負う。

 申告納税制度の下においては、租税特別措置の複数の選択肢から選択した結果に対する責任も納税者自身に負わせる。例えば平成十八年七月二六日東京地裁判決の事件(TAINS・Z999-0098)は、公共事業に伴う用地買収と代替資産の取得に関しての事案である。課税繰延または特別控除のいずれの選択肢もある状況で、課税繰延を選択したが、代替資産の要件を誤り、結果として過少申告となったものであり、法令の要件を充分に検討していれば特別控除の方が大幅に有利であったというケースである。
このような事案は他にも多数あるが、多くの場合、税理士の依頼人である納税者に対する、税理士の損害賠償責任に関する事件として裁判に現れる。このように複数の租税特別措置の中から、いずれを選択するか、またはいずれをも選択しないかは納税者自身の選択であり、例えその結果が納税者自身に不利益な結果であっても甘受しなければならない。

 租税特別措置の選択ではなく、所得区分の解釈を変更した場合、当初の申告の錯誤無効を主張できるだろうか。平成十六年十二月二十二日名古屋地裁判決(TAINS・Z254-9875)のケースは、過年度のストックオプションに係る所得を給与所得として修正申告した後、既に一時所得であるとの判決が出ていることに気づいたが、この時点で更正の請求期限が徒過しており、修正申告の錯誤無効を主張したケースである。

 裁判所は、錯誤無効が主張できる場合は、「その錯誤が客観的に明白かつ重大であって、法の定めた方法以外にその是正を許さないならば、納税者の利益を著しく害すると認められる特段の事情がある場合に限って、無効を主張できるというべきである」とする、最高裁昭和三十九年十月二十二日判例(TAINS・Z038-1324)を引用して、ストックオプションの権利行使利益について、当時、一時所得説に立つ裁判例がある一方で、給与所得説に立つ裁判例も有力であったから、給与所得に区分されるという考え方が明らかに誤りであったとはいえず、その錯誤が客観的に明白であったとはいえない、として原告の請求を棄却している。

(4)税理士の役割
 
 ここまで見てきたように、申告納税制度の下では、納税者の意図にかかわりのないうっかりミスによる手続きの遅れや不利益な選択の結果に対する責任を納税者自身に負わせる。また複雑で難解な租税法規の解釈の責任を納税者自身に負わせ、解釈誤りの訂正については、更正の請求制度で救済できない場合には、容易に認められない。
「申告納税制度が適正に機能するためには、国民が高い納税意識をもち、自発的に正確な申告をすることが必要である」(金子)といわれているが、そのためには納税者の代理人として租税の専門家たる税理士の存在が不可欠である。ただし、租税特別措置の有利選択ミスや法令解釈ミスによる裁判事例のほとんどが、税理士が係わった事件であることも触れておかなければならない。私たち税理士が納税者の代理人として行う行為は納税者自身の行為として、その責任を納税者が負う。その結果納税者からの税理士に対する損害賠償として責任が税理士にも跳ね返ってくるのである。私たち税理士は申告納税制度の根幹を担っているのであり、専門家としての日々の研鑽を怠ってはならないことを肝に銘じなければならない。

(5)おわりに
 最後に、申告納税制度と租税法律主義の関係に関して一言付言したい。
税理士は「税負担が一番少なくなるように」などという包括的な業務委託を受けて、その結果だけを納税者に説明するのではない。「税法などは単に裁判規範である前に何よりも行為規範でなければならない」(三木)との指摘があるが、申告納税制度の下では納税者自らが租税債務を確定する責任を負うのであり、そのためには法律で定められた課税要件を納税者自身が理解しなければならない。そして業務を委託された税理士には、その説明責任がある。従って、租税法規は専門家でなくとも理解可能なものであることが望ましいし、改正について国は充分な周知期間を設けて周知広報活動に努めることが前提となろう。


(参考文献)
金子宏『租税法』第十一版。
三木義一『現代税法と人権』。
 
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