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申告納税制度の本当の意味 |
2006年1月7日 00時00分 |
平成18年度改正のひとつですが、平成19年1月1日以後無申告加算税について次のように取り扱われる予定です。「調査があったことにより決定があるべきことを予知して提出されたものではない期限内申告書に係る無申告加算税について、その申告書が法定申告期限から2週間以内に提出され、かつ、その申告書に係る納付すべき税額の全額が法定申告期限までに納付されている等の期限内申告書を提出する意思があったと認められる一定の場合には、無申告加算税を課さない」。期限内申告書を提出する意思があったのに出さない場合とは、どのような場合かというと出し忘れた場合です。なぜ、わざわざ出し忘れに対する取り扱いが決められるのでしょうか。この改正の背景には次ぎのような事件がありました。
某電力会社は平成15年6月2日期限の消費税について同日247億7850万9700円を納付したのですが、こともあろうにその申告書の提出を失念してしまったのです。税務署からの問い合わせでこれに気づいたその会社は6月13日にこの申告書を提出したのですが、時すでに遅く、12億 3892万5000円の無申告加算税を課されることになったのです。あまりの金額にその会社は裁判に及びましたが平成17年9月16日に大阪地裁で敗訴し控訴を断念しました。人情的には酷な判決のように感じます。しかしわが国の申告納税制度からはこの結論が導かれるのも止むを得ないかもしれません。裁判官は「期限内申告書の提出の重要性をないがしろにし、申告納税制度を定めた法の趣旨を没却するものというべきであり、期限後申告書の提出によって同瑕疵が治癒したものとして、「無申告」には該当しないとする原告の主張は理由がない」と指摘しました。税額を納税者自ら確定するという申告納税制度は、一見民主的な租税制度と捉えられています。しかし一方では納税者は租税債務を確定する責任を負っているともいえます。
申告納税制度においては難解な税法の解釈は納税者に委ねられており、この解釈が誤っていたり、うっかりミスをしていても課税当局は申告の段階で原則としてはこれを指摘することはありません。解釈の誤りや法令の適用ミスがあれば、納税者自らが確定した租税債務に対し、課税当局は税務調査や更正・決定処分を行うことになります。そして税務調査に基づく修正申告や更正・決定処分によって税額が増加または発生した場合には、納税者自身の責に基づくものとして過少や無申告または不納付であった本税以外に加算税や延滞税が課されることになります。納税者に自らの税額を確定する権限が与えられているということは、納税者に租税法規の完全な理解を前提としていることなのです。このような面からは申告納税制度は納税者にとって極めて不利な制度となります。この納税者側にとって不利な点を補う為には税法の解釈について課税当局と対等に渡り合える専門家が納税者側に必要になります。この専門家が税理士であり、税理士は 申告納税制度における納税者の権利確保の為、専門家として重要な役割を担うことになります。
出し忘れに対する無情な無申告加算税は冒頭の改正で免れることとなるようですが、言い換えれば例え人情的に酷な取り扱いであっても法律の改正を待たなければならないと言えます。
2007年4月30日一部改訂
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