出川洋税理士行政書士事務所(奈良県香芝市)

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近畿税理士会葛城支部会員 税理士 出川 洋
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勘定合って銭足りず
(はじめに)
 同窓会のような非営利団体の決算書には収支計算書というタイトルが付けられているのを多くの方がご存知だと思います。収支計算書には資金の出入りが記入されていて、最終値は決算日の資金の有り高が表示されます。一方営利企業の決算書は最終値が利益です。この利益は公正な企業会計のルールに従って計算されます。また法人税や所得税などの儲けに対して課税する税金の儲けを表すものとして所得金額という言葉が使用されます。これらを上から順に収支計算・利益計算・所得計算という言葉でよぶことにします。収支計算・利益計算・所得計算という言葉は法律上の言葉でも学術上の言葉でもなく、この記事で便宜的に使う言葉です。
 さて、経営者は税理士や税務署に言われなくても常に収支計算をしています。資金繰りという言い方をしますが、資金の出入りを管理し、将来の資金予測をして借入等の資金の手当てをします。利益計算は決算書として表されます。決算書は銀行などの債権者、取引先から要求されますが、企業会計のルールに基づいて作成されますので比較し分析することに有用です。大企業の場合には決算書は株主に経営内容を開示する手段として作成されますが、中小会社の場合には株主と経営者が同じ場合が多いので決算書に表示するまでもなく株主は会社の経営内容を知っているはずです。所得計算は税金を計算する為の道具です。利益計算と所得計算は良く似ていますが、目的が異なりますのでそれぞれの目的に応じて異なる部分があります。
 利益計算は債権者や株主等に企業情報を開示することが目的ですので、それぞれの企業ごとに特有な事情を考慮して利益が計算されます。一方所得計算は税金を計算することが目的ですので、一定の計算方法を事前に周知しそれぞれの企業の特殊事情をできるだけ排除して所得を計算することが課税の公平につながるという風に考えられています。
 企業経営者には収支計算と利益計算・所得計算のそれぞれの違いをよく理解いただいて私たちがつくる利益計算の方法に基づいた試算表や決算書をご覧になり、さらにこれが申告書上で所得計算に置き換わること なり、そして税負担による資金繰りを収支計算にフィードバックするという点をご理解いただくためにこの記事を書き進めます。

(1)固定資産の購入と減価償却費
 固定資産を購入された場合には収支計算上資金は流出しますが、もちろん購入しただけでは利益計算上も所得計算上も費用又は損金や必要経費になりません。固定資産は使用されることによってその使用期間に応じて減価償却費として認識されるのですが、これを裏返しますと収支計算書に減価償却費は表示されません。この部分は収支計算と利益計算または所得計算の違いを生じさせる最も大きな理由の一つです。
 また利益計算と所得計算とも違いが生じることがあります。それは減価償却の計算に使用される耐用年数が原因です。減価償却はその固定資産が次に取り替えられる時期までの期間に応じて費用を配分する方法ですから、本来耐用年数はその次に取り替えられるまでの期間であるはずです。例えば木造モルタル作りの店舗であっても、国道沿いの飲食店と商店街にある老舗和菓子屋の店舗では建替えの必要が生じる時期は異なります。前者は頻繁にリニューアルするでしょうし、後者はできる限り同じ店舗で営業したいとのではないかと思います。ソフトウエアーやWebコンテンツ、映像などを扱う業者のパソコンは常に最高スペックが欲しいところですが、名簿管理だけにパソコンを使用している業者では未だに10年以上前のパソコンを使われているところを見かけます。このようにそれぞれの企業には、固定資産の利用についてそれぞれの事情があるのですからそれぞれの企業に応じた耐用年数で良いはずです。利益計算上の耐用年数はこのように考えられるべきであって、実際京セラの稲盛氏の著書を読むと、京セラでは自社の経験に基づいた耐用年数表を作成してこれに基づき決算書を作成されているようです。一方所得計算では資産に応じた耐用年数を決めて公表しています。これが法定耐用年数と呼ばれるものです。企業独自の耐用年数を定められても、その精度にどの程度信頼が置けるのか、または利益操作などの恣意が介在しないかという点が問題になります。この問題が解決できないのであれば課税の公平は保てません。そこで法定耐用年数を定めてこれを公表すことによって課税の公平を保とうとしているのです。このように考えると減価償却費の計算は利益計算と所得計算とで異なるということが分かります。
 企業が固定資産を使用する場合において、収支計算・利益計算・所得計算をイコールにする方法はリース契約を利用することです。リース契約を利用することによって資金繰りを単純化することはできます。しかしリース契約にはデメリットもあります。資金の負担総額はもちろん多くなります。中途解約ができず、リース期間終了後には返却するのが原則です。どちらが有利かは一概に言えません。内容をよく理解した上で状況に応じた判断が必要になってきます。

(2)支払い条件を考える
 先月50万円の売上、今月100万円の注文、来月には1千万円の取引が予定されている得意先が最近できたので、当社も順調に売上が伸びる予定です、というお話がある場合。私たちは支払い条件は大丈夫ですか、とお尋ねすることになります。意外にも支払い条件がきちっと約束されていない場合があるのです。1千万円の売上はありがたいことですが、入金されなくては仕入れ金額を払うことも、従業員に給料を払うこともできません。売上代金の集金を30日後に仕入れ代金の支払を35日後にすることによって何とか仕入れ代金の支払をすることはできますが、従業員の給料は毎月きちんと払ってやらないといけません。これが手形になると90日も先でないと資金化しません。1千万円の90日手形の売上より100万円の即金の売上の方がありがたい場合もあるのです。売上直後に決算日を迎えるともっと大変です。決算日から2ヵ月後には税金の資金繰りをしないといけません。所得計算上は売上に計上されていますので資金が未回収なのにも関わらず先に税金を支払わないといけないからです。さらに1ヶ月目50万円即金で売上、2ヶ月目も100万円即金で売上、そして3ヶ月目に1000万円の手形売上と注文が増える新たな得意先には注意しないといけない点があります。取り込み詐欺の恐れがあります。3ヶ月目の1000万円の出荷までに相手を充分調査する必要があります。出荷してから気づいたのでは、たとえ相手が警察に捕まっても取り返すことは非常に困難です。

(3)売掛金を管理する
 商品を売り上げる場合30日後に売上代金が入金され、35日後に仕入れ代金が支払われるのであればうまく資金が回ります。しかし売掛金が30日後に入金される予定であったのに入金されない場合にはたちまち資金ショートを起しかねません。売掛金の回収には充分注意しないといけませんが、売掛金の回収遅れは必ずしも相手の資金状態によるとも限りません。得意先ごとに売掛金を管理すると特定の得意先の回収が一部遅れていることに気が付くかもしれません。そのような先が複数あり、これが同じ営業マンの担当であるならばその担当者に原因がある場合もあります。強引な売りつけや回収条件を勝手に変更した売りつけがあるのかもしれません。担当者に任せきりで、会社が受け取っている請求書と得意先が受け取っている請求書が別物で、その担当者が横領しているケースも無きにしも非ずです。売掛金を得意先ごとに担当者ごとに管理するのは経営者や管理者の職務です。

(4)すわ、リストラ
 企業にとって最大の固定費が人件費であることは多くの企業で同様だと思います。人件費とはもちろん給料だけでなく、社会保険料なども含みます。社会保険料が政府の運営の失敗により年々引き上げられるのも憤懣やる方なしというところです。従来から人件費は年功と残業時間で計算する方法が多く採用されていました。これは計算が単純だからです。しかし年功が能力と比例していないことはもちろん、残業手当てにも問題が指摘されてきました。同じ仕事をさせたのに、時間内に仕事を終わらせた者の方が給料が安くなるという点です。このような問題を解決するために人件費を変動費化することによって資金繰りを改善しようとする努力が払われます。例えば正社員をリストラし、パートタイマーと派遣社員で賄う方法です。
 しかし一概にこの方法が良いとは言えない場合もあります。企業には儲かるシステムが必要ですが、このシステムの大きな位置をマンパワーが占めているからです。儲かるシステムに貢献できる人材を育成し、その貢献度を評価することによって人件費を変動費化できるのではないでしょうか。この評価は非常に難しいと敬遠されてはいますが、与えた仕事を期限内に完成させることができるのか、自分にできる仕事を割り切って、難しい仕事を途中で投げ出してしまうのか、完成させた仕事の完成度はどの程度か、プラスアルファーが付いているのか、といった点を評価する為には従業員とのコミュニュケーションが必要です。リストラ・パート・派遣社員の前に評価方法の変更を考えてみてはいかがでしょうか。私は大企業が何百人も何千人もの従業員をリストラする様子をみて疑問を持つことがあります。企業には雇用の場の提供という社会的役割と責任があります。リストラは会社存続の最後の手段であって、この切り札を使ってしまった経営者は退任すべきです。

(5)当社製品が大ヒット
 新工場を増設する前に大ヒットの原因が何かを考えて見ましょう。洗濯板で洗濯していた時代に洗濯機が出来てこれが大ヒットしたのか。洗濯物を上から入れていたのが、横から入れるようにして大ヒットしたのか。白物家電といわれていた洗濯機をカラフルなものにしたから大ヒットしたのか。洗濯板が洗濯機になった時点で文化が変わったのです。洗濯機の形や色が変わったのは単なるブームです。文化を変えるぐらいの大ヒットであるならば新工場の増設も必要です。でもブームだけでヒットしているものは危険です。新工場を増設し大量生産体制が整ったころにはブームは去っているかもしれません。自社工場ではなく外注で賄った方が良いかもしれません。
 洗濯機と同じような例は、ソニーのウォークマンでもいえます。ステレオ音楽は大きなステレオで部屋で聞くものだったのを、路上に持ち出しました。このときに新たな文化が生まれたのです。その後携帯音楽プレーヤーがMDやデジタルに変化してきましたが、技術が進歩しただけで新たな文化が生まれるに至っているようには思えません。何か新たな文化を生むような大ヒット製品を思いつきたいものです。

(6)最後に在庫
 固定資産のところで、収支計算と利益計算または所得計算の違いを生じさせる最も大きな理由の一つです、と書きましたがもう一つの理由がこの在庫です。最近店頭の商品を毎日オンラインで管理している企業が出てきました。店頭で売れた商品を売れた数量だけメーカー側に発注することで極力在庫を持たない努力が払われています。メーカー側はたまったものではありません。注文があったいろんな種類の製品をごく少数明日までに出荷しなければなりません。結局のところメーカー側では見込み生産をすることになってしまって、在庫リスクをメーカーが一身に背負うことになっている場合があります。しかし相手方が在庫リスクを負ってく れた時代に後戻りすることも期待はできません。嘆いてばかりはなくメーカー側も徹底的に在庫管理をしないといけない時代になってきています。零細な町工場では棚卸しに使う労力がなくて、厳密な棚卸しができないと割り切った経営者も おられるかもしれません。しかし棚卸しは税金を計算する為にするのではありません。実地棚卸しをすることによって不良在庫を明確に区分しましょう。不良在庫であってもその取得にはお金がかかっています。これを捨てるには惜しいと思われる経営者の気持ちも分かります。しかしお金に換わらないのなら 、ごみの山を保管する倉庫に費用を使っているようなものです。不良在庫は出来るだけ早く叩き売ってでも資金化する。資金化できなければ思い切って処分するべきでしょう。ごみの山で足の踏み場も無い会社では同じ消耗品を何度も購入して会社内で行方不明になっています。 不良在庫を処分することによって、ごみの山に隠れていた文房具が入った箱を発見するかもしれません。さらに実地棚卸しと平行して帳簿棚卸しを勧めます。実地棚卸しと帳簿棚卸しの差額は、請求漏れや二重請求などのミス。さらに盗難や横領などの不正を発見するかもしれません。実地棚卸しや帳簿棚卸しは決算期 だけでなく頻繁に、出来れば毎月行われるべきです。そんなことばかりしていたら現場の仕事が出来ないおっしゃる経営者もおられるかも知れません。経営者自ら現場の仕事をしていて会社を管理する時間がないとおっしゃるのなら、それは本末転倒です。 その経営者は経営者の仕事をしていないからです。経営者は経営者の仕事をしないといけません。


 この記事は平成17年10月15日に出川税理士事務所セミナーでお話した内容の一部を整理したものです。


2005.10.15

 
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