金の仏像は相続税対策にならない

 今年(平成27年)1月1日以後に開始した相続について基礎控除が引き下げられたことは、ご存知だと思う。
相続対策として、金の仏像や仏具の購入が相続税対策になるというのが巷の噂になっているが、これには注意しなければならない点がある。

金の仏像の購入が、相続税対策になるという理屈の根拠は、相続税法12条の「墓所、霊びょう及び祭具並びにこれらに準するもの」については相続税の課税価格に算入しない旨の規定だと思われる。

相続対策というからには、相続税の支払い時には相続税がかからず、しかし相続人に対してはそれなりの財産的な価値のあるものを残したいということではないだろうか。ところが「祭具並びにこれらに準ずるもの」、すなわち信仰の対象には換金性の財産的な価値が無いから非課税なのだ。

金の仏像を承継した相続人は、これを売りとばして金(かね)に換えるという罰当たりなことをするのだろうか。もちろんするのである。罰当たりなんか気にしていないのである。とするとその金の仏像はそもそも信仰の対象ではない。信仰の対象ではないのだから「祭具並びにこれらに準ずるもの」には該当せず、単なる金でできた工芸品にすぎない。従って非課税財産には該当しない。

「相続税対策として、金の仏像を購入する」という文脈そのものが理論矛盾なのである。もちろん信仰の対象であるか否かは主観の問題であるから、国税当局が主観の嘘を証明するのは困難であるという話がこの節税話の本質なのだが、それでは節税ではなく脱税をごまかす手段に過ぎない。


2015年02月14日