在庫が減ると利益は減るのか増えるのか

在庫が減ると、利益は減りますという説明がされることが一般的です。ところが、経理スタッフが「在庫が減ると利益が増えるのではないのか」と経営者に聞かれて、うまく説明ができずに先生に説明をお願いしますと頼まれたケースがあります。

 なるほど・・・このケースを分かり易く説明できるかどうか、というところは説明の力量が問われますね。

ちょっと文章にして整理してみることにしました。果たして皆さんに伝わるのだろうか・・。

(1)何と比べて、利益が増えるのか減るのか
 経理スタッフが、「在庫が減ると利益が減る」と説明したことが間違いではありませんが、経営者が「在庫が減ると利益が増える」のではないかと疑問を持ったこともうなずけます。

 この場合、何に対して利益が減る、または増えると言っているのでしょうか。その比較の対象が異なっているために話が食い違うこととなるのです。

(2)在庫が減ると利益が減るという説明

 ある月の売り上げに対するコストの計算を、

 月初在庫+当月仕入-月末在庫=当月売上原価(売上に対するコスト)

の方法で行っている場合

 月初在庫と月末在庫を比較して、月末在庫が増えていればコストの減少、月末在庫の方が減っていればコストの増加を表します。

 経理スタッフの説明は、単純に当月の売上金額から当月の仕入金額を引いた利益よりも、月末在庫が月初在庫より減った分だけコストが増加しているので利益が減少していますよ、と説明しているのです。

比較の対象は、在庫集計という作業をする前の帳簿上の利益です。

(3)在庫が減ると利益が増えるという説明
 経営者の感覚としては、在庫が減った分、商品が売れているのだから利益は出ているはずだということなのです。しかし、この説明が正しい結果となる為には前提条件がいろいろあります。

 ①その月には、不良品、クレームなどのロスや営業の必要等の為の値引き販売が無く、全ての売り上げが正常価格で販売されていた。
 ②仕入の数量も、毎月定量を仕入れている。
 ③正常な売価には当然コストを上回っていて、適正な利益が出るように設定されている。
 
このような条件を前提とする場合にも、月初在庫より月末在庫が減少した分だけコストが増加しているのは同じです。ただしコストの増加分より多く売り上げが増加しているはずですから、前月と比べて利益は増加しているという説明がでてきます。

この場合の比較の対象は前月の利益です。ただし、上記の要件を満たしているときに限りますので、在庫の比較だけでは、前月に比べて利益が増えているのか減っているのかはわからないのが通常です。

(4)経営者にとっては資金繰りも重要
 在庫が増えているから利益が増加しているなんてとんでもないという感覚は、経営者にとってもっともな経営感覚です。だって売れない在庫なんて、給料にも納税資金にもなりませんから。にもかかわらず、前期より在庫が増えた分はコストから控除されるので、資金繰りは苦しいのにさらに税金が増えるのはおかしい! そうです、過剰な在庫を持ちながら税負担が増えるという窮地に陥りますので、適正在庫管理はとっても重要なことなのです。

 

2016年06月03日